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**スルド(Surdo)**は、ブラジルのサンバで重要な役割を担う大型の太鼓です。
円筒形の大きな胴と深く響く低音が特徴で、サンバの打楽器隊**バテリア(Bateria)**の中では、音楽全体を下から支えるような力強いビートを担当します。
リオのカーニバルでは、大勢の打楽器奏者が演奏する中から「ドン、ドン」と身体に響くスルドの低音が鳴り響き、ダンサーや演奏者、観客を巨大なサンバのリズムへと引き込みます。
身体の奥まで響く重低音と巨大なサンバの鼓動――ブラジルの熱狂的なリズムを根底から支えている太鼓がスルドです。
名称:スルド(Surdo)
地域:ブラジル
分類:大型の両面太鼓・バスドラム
代表的な音楽:サンバ
主な演奏場所:カーニバル、サンバパレード、舞台など
演奏集団:バテリア
演奏方法:マレットなどで打面を叩く
特徴:低く力強い重低音
役割:サンバ全体の基本的な拍と土台を支える
演奏形態:複数のスルドを役割分担して演奏することが多い
魅力:身体全体で感じる巨大なビート
スルドは、ブラジルのサンバを象徴する大型の低音太鼓です。
細かなリズムを高速で演奏する小型打楽器とは異なり、スルドは大きく深い音によって音楽全体の土台を作ります。
「ドン!」
という一打が響くだけで、周囲の空気まで震えるような迫力があります。
サンバの華やかなリズムの奥で鳴り続ける、いわば心臓の鼓動のような存在です。
スルドを理解するうえで欠かせないのがサンバです。
サンバでは、さまざまな打楽器が異なるリズムを演奏します。
高い音。
低い音。
細かな連打。
アクセント。
それぞれが重なり合うことで、独特の巨大なグルーヴが生まれます。
その最も低い音域から全体を支えているのがスルドです。
サンバの大規模な打楽器隊を**バテリア(Bateria)**と呼びます。
バテリアにはスルドだけでなく、
カイシャ
ヘピニキ
タンボリン
アゴゴ
ショカーリョ
など、さまざまな打楽器が加わります。
それぞれが異なるパターンを演奏しながら、一つの巨大なリズムを作り上げます。
スルドはその一番下で、全体を支える低音を担当します。
スルドはしばしば、サンバの心臓にたとえられます。
細かなリズムがどれほど複雑になっても、その下ではスルドの大きなビートが響いています。
ドン。
ドン。
ドン。
その規則的で力強い低音によって、数十人、場合によってはさらに大規模な演奏者たちが一つの流れを共有できます。
スルドは、大きな円筒形の胴を持っています。
両端に打面が張られ、肩からストラップなどで吊り下げて演奏する姿がよく見られます。
パレードでは奏者自身が歩きながら演奏します。
大型の太鼓を身体につけ、大きなマレットを振りながら進む姿は、サンバパレードを象徴する光景の一つです。
スルドは一般的に、先端に柔らかなヘッドを持つマレットなどを使って打面を叩きます。
太鼓が大きいため、軽く叩くだけでも深い音が響きます。
しかし実際の演奏では、
打つ位置。
マレットの動き。
音を止めるタイミング。
反対側の手の使い方。
などによって音の長さや表情を変化させます。
スルドでは、マレットで打つだけでなく、もう一方の手を使って打面の響きをコントロールする奏法もあります。
打面を開放すれば、音が長く響きます。
手で触れれば、響きを短くできます。
同じ「ドン」という一打でも、音を伸ばすか止めるかによってリズムの印象が変わります。
サンバでは、一台のスルドだけで低音を作るとは限りません。
音域や役割の異なる複数のスルドを組み合わせることで、低音そのものにもリズムの掛け合いを作ります。
一方のスルドが鳴る。
次に別のスルドが応える。
さらに別のスルドがアクセントを加える。
巨大な低音同士の会話が、サンバの推進力を生み出します。
サンバのスルドには、役割の異なるパートがあります。
一般に低い音域を担当するスルドの一つが**プリメイラ(Primeira)**と呼ばれます。
サンバの基本となる大きなビートを担当し、バテリア全体へ強力な土台を提供します。
ただし名称や役割の分け方は、サンバのスタイルや団体によって異なる場合があります。
もう一つの基本的なスルドの役割が**セグンダ(Segunda)**です。
プリメイラとは異なる拍を担当し、交互に低音を響かせることでサンバ特有の大きな脈動を作ります。
一つの太鼓がすべての拍を叩くのではなく、複数の奏者が役割を分担するところが面白いポイントです。
さらに変化を加えるスルドとして**テルセイラ(Terceira)**などがあります。
基本の低音パターンに対して、より変化のあるフレーズやアクセントを加えます。
これによって低音部分にも単調ではない豊かなグルーヴが生まれます。
サンバの魅力の一つがシンコペーションです。
単純に強い拍だけを叩くのではなく、さまざまな打楽器が拍の間へアクセントを入れます。
その中でスルドは大きな拍を示しながら、ほかの楽器が細かなリズムを重ねます。
低音の安定感と細かなリズムの動きが組み合わさることで、自然に身体が動き出すようなサンバのグルーヴが生まれます。
スルドの迫力を象徴する舞台がリオのカーニバルです。
巨大なサンバパレードでは、華やかな衣装をまとったダンサーや巨大な山車とともに、大規模なバテリアが進みます。
その中から響くスルドの重低音。
観客席まで伝わる振動。
無数の打楽器が重なった巨大なリズム。
スルドは、あの圧倒的なサンバパレードを音の底から動かしています。
リオのカーニバルでは、**サンバスクール(Escola de Samba)**と呼ばれる団体が大規模なパレードを披露します。
各サンバスクールにはバテリアがあり、多数の打楽器奏者が参加します。
スルド奏者もその重要なメンバーです。
大人数が同じビートを共有しながら演奏するため、高い集中力とアンサンブル能力が必要になります。
スルドはコンサートホールだけで演奏される楽器ではありません。
サンバパレードでは、奏者が太鼓を身体に装着し、歩きながら演奏します。
演奏する。
前へ進む。
周囲の奏者とリズムを合わせる。
観客の熱気を感じる。
これらを同時に行います。
そのため演奏者の身体そのものがサンバのリズムの一部になります。
スルド最大の魅力は、やはり低音です。
高音の打楽器は耳へ鋭く届きます。
一方、スルドの音は胸や腹へ直接届くように感じられます。
特に多数のスルドが一斉に鳴った瞬間には、音を「聴く」というよりも振動として感じる感覚があります。
スルドは大きな音を連続して出すだけの楽器ではありません。
演奏の途中でリズムが止まる。
一瞬の静寂。
そして、
ドン!
とバテリア全体が再び始まる。
この瞬間には非常に大きな高揚感があります。
低音が消えた瞬間があるからこそ、戻ってきた一打がさらに強烈に感じられます。
サンバでは音楽と踊りが密接につながっています。
スルドの低音は、ダンサーにとってもリズムを感じる重要な手掛かりになります。
耳だけでリズムを追うのではなく、身体に伝わる低音に合わせて動く。
演奏者とダンサーを同じ鼓動でつなぐことも、スルドの重要な役割です。
日本の和太鼓とスルドは、どちらも身体に響く低音が魅力です。
しかし演奏文化は大きく異なります。
和太鼓では、太鼓そのものを主役にした組太鼓や創作和太鼓があります。
一方、スルドはサンバのバテリアの中で、ほかの多数の打楽器と組み合わされながら音楽全体の低音を支えることが大きな役割です。
西アフリカのジャンベは、基本的に素手で叩き、一つの打面からベース、トーン、スラップなど多彩な音を作ります。
スルドは大型の円筒形太鼓で、主にマレットを使い、深い低音を担当します。
ジャンベが一台で多彩な音色を奏でるのに対し、スルドでは複数の大型太鼓が役割を分担して巨大な低音リズムを作るところにも特徴があります。
インドのタブラは指先を使って非常に細かなリズムと多彩な音色を奏でます。
スルドはそれとは対照的に、大きなマレットによる深く力強い一打が特徴です。
タブラが緻密な指の動きを楽しむ太鼓なら、スルドは身体そのものを揺らす巨大なビートを楽しむ太鼓といえます。
初めてスルドの演奏を見るなら、
巨大な円筒形の太鼓
身体に響く重低音
大きなマレットの動き
手で打面をミュートする奏法
複数のスルドによる掛け合い
バテリア全体とのリズムの重なり
歩きながら演奏する奏者の動き
ダンサーと低音の一体感
演奏が一斉に再開する瞬間
などに注目すると楽しみやすくなります。
サンバでは数多くの音が鳴っています。
鋭い金属音。
細かな連打。
高い太鼓の音。
歌。
歓声。
そのすべての下から、
ドン、ドン
と大きな低音が響き続けます。
この音があることで、大勢の演奏者とダンサーが一つの巨大なリズムを共有できます。
サンバの華やかさを一番下から支え、人々の身体を動かす巨大な鼓動――それこそがスルドです。
スルドは、ブラジルのサンバを代表する大型の低音太鼓です。
大きな円筒形の胴を持ち、主にマレットを使って深く力強い音を響かせます。
サンバのバテリアでは、複数のスルドが役割を分担しながら基本となるビートやアクセントを作り、カイシャ、ヘピニキ、タンボリンなどの打楽器とともに巨大なリズムを生み出します。
特にリオのカーニバルでは、多数の奏者によるスルドの低音がパレード全体を包み込み、ダンサーから観客まで同じビートへ引き込みます。
胸を震わせる重低音、大勢の奏者が生み出す巨大なビート、そしてカーニバルを前へ進ませる圧倒的な推進力――ブラジル・サンバの「心臓」として鳴り響くことが、スルド最大の魅力です。