
目次
**クランプスラウフ(Krampuslauf)**は、オーストリアをはじめとするアルプス地方で行われる、クランプスと呼ばれる怪物のような姿の人物たちが街を練り歩く伝統行事です。
クランプスは、聖ニコラウス(サンタクロースのモデルの一人として知られる聖人)の従者として登場する存在で、角のある恐ろしい仮面、毛皮の衣装、大きな鐘などを身につけて街を歩きます。特に11月末から12月上旬にかけて各地でクランプスラウフが開催されます。
名称:クランプスラウフ(Krampuslauf)
開催地域:オーストリアなどアルプス地方
時期:主に11月末~12月上旬
主役:クランプス、聖ニコラウス、天使など
特徴:仮面、毛皮、角、鐘を身につけた参加者によるパレード
目的・背景:聖ニコラウスの伝統と結びついた冬の民俗文化
見どころ:精巧な仮面、毛皮の衣装、鐘の音、夜のパレード
クランプスは、アルプス地方の冬の民俗文化に登場する角を持った恐ろしい姿の怪物です。
長い角、牙のような歯、毛むくじゃらの顔、黒や茶色の毛皮などで表現されることが多く、手作りの木製仮面を身につけます。
一方で、クランプスは単なる「怖いキャラクター」ではなく、聖ニコラウスと対になる存在として伝統行事の中に登場します。
クランプスラウフでは、クランプスだけでなく聖ニコラウスも登場することがあります。
聖ニコラウスが子どもたちに贈り物を渡す一方、その周囲をクランプスたちが取り囲むという構成が伝統的です。
オーストリア・チロル地方などでは、12月初旬に聖ニコラウスの入場とクランプスラウフが組み合わされた行事が各地で行われています。
クランプスラウフの最大の魅力は、多数のクランプスが一斉に街へ現れる光景です。
参加者はそれぞれ異なる仮面や衣装を身につけ、グループごとにパレードします。
大きな角を持つ仮面、長い毛皮の衣装、腰につけた巨大な鐘など、グループによってデザインもさまざまです。
クランプスの見た目を決定づけるのが**仮面(Larve)**です。
伝統的なクランプス仮面には、木を彫刻して作られたものが多く、鋭い目、牙、角、しわのある顔など、非常に精巧な造形が施されています。
チロル地方では、こうした仮面を制作する職人の技術そのものも文化の一部となっています。
仮面だけでなく、毛皮の衣装もクランプスの重要な特徴です。
さらに腰には大きな金属製の鐘をつけることが多く、クランプスが歩くたびに「ガラン、ガラン」と大きな音が響きます。
暗い冬の街に鐘の音が響き、クランプスたちが姿を現すことで、独特の幻想的な雰囲気が生まれます。
クランプスラウフは、夕方から夜にかけて開催されるものも多くあります。
街灯や照明に照らされたクランプスの仮面、毛皮の衣装、鐘の音などが重なり、昼間とはまったく違う雰囲気になります。
炎や光を使った演出が行われるイベントもあり、冬の夜を彩る迫力ある伝統行事となっています。
クランプスラウフでは、クランプスたちのグループを**「Pass(パス)」**と呼ぶことがあります。
各地域のパスが独自の仮面や衣装を用意し、まとまってパレードに参加します。
そのため、一つのクランプスラウフに多数のパスが集まると、さまざまなデザインのクランプスを見ることができます。
クランプスの姿は地域によって少しずつ異なります。
角の形や仮面の表情、毛皮の色、衣装のデザインなど、それぞれの地域やグループに独自のスタイルがあります。
チロル、ザルツブルク、シュタイアーマルクなど、オーストリア各地で異なるクランプス文化を見ることができます。
クランプスラウフを調べると、**ペルヒテン(Perchten)**という存在も登場します。
両者は似た仮面や毛皮の衣装を使用することがありますが、伝統的な意味合いには違いがあります。
クランプスは主に聖ニコラウスと結びつき、12月5日前後を中心に登場します。
一方、ペルヒテンは古いアルプス地方の冬の風習と結びつき、特にクリスマスから公現祭までの「ラウナハト(Rauhnächte)」の時期に登場することがあります。
アルプス地方の冬の民俗文化には、恐ろしい姿の存在が冬の悪霊を追い払うという考え方があります。
クランプスやペルヒテンの姿には、こうした古い冬の風習の影響が見られます。
現在のクランプスラウフでは、伝統文化としてのパレードやショーという形で受け継がれています。
クランプスラウフは、オーストリアのさまざまな地域で開催されています。
たとえばチロル地方では、インスブルック、ゼーフェルト、リエンツなどで2026年のクランプス関連イベントが予定されています。
ザルツブルク周辺でも、クランプスやペルヒテンによる伝統行事が行われています。
大規模なイベントでは、数百人以上の参加者が集まることもあります。
たとえば2026年12月7日にオーストリアのバート・ゴイーザーンで開催予定のザルツカンマーグート・クランプスラウフでは、過去に800人以上、90以上のパスが参加したと案内されています。
街の中心部を大勢のクランプスやペルヒテンが歩く、非常に大規模な冬のイベントです。
クランプスラウフでは、恐ろしいクランプスだけでなく、聖ニコラウスや天使が登場することもあります。
子どもたちに小さなプレゼントを配るなど、家族向けの要素を持ったイベントも開催されています。
そのため、地域によっては怖さだけではなく、クリスマスシーズンの楽しい行事として親しまれています。
雪が降るアルプスの街並みとクランプスの姿は、非常に印象的な組み合わせです。
古い街並みを背景に、角のある仮面と毛皮の衣装をまとった人々が歩き、鐘の音が響く。
冬のアルプス地方ならではの幻想的な光景が広がります。
現在のクランプスラウフは、伝統行事であると同時に、地域の観光イベントとしても重要な存在です。
参加者が時間をかけて仮面や衣装を制作し、地域のパスとして活動することで、伝統的な造形技術や地域文化が次世代へ受け継がれています。
2026年もオーストリア各地でクランプスラウフが予定されています。
たとえばグラーツでは2026年11月8日に大規模なクランプスラウフが開催予定。チロル地方でも11月末から12月にかけて各地で開催されます。
クランプスラウフは、オーストリアを中心とするアルプス地方で受け継がれてきた冬の伝統行事です。
角のある恐ろしい仮面、毛皮の衣装、大きな鐘を身につけたクランプスたちが街を練り歩き、聖ニコラウスや天使とともに独特の冬の祭典を作り上げます。
地域によって仮面や衣装のデザインが異なり、複数の「パス」が参加する大規模なイベントでは、個性豊かなクランプスが一堂に集まります。
暗い冬の街に鐘の音が響き、角と毛皮をまとったクランプスたちが次々と姿を現す――クランプスラウフは、聖ニコラウスの伝統とアルプス地方に伝わる冬の民俗文化が融合した、幻想的で迫力のある伝統行事です。